女性の婦人科疾患では漢方がよく使われています。子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群、糖尿病、更年期障害、生活習慣病などは、瘀血の症状として捉えられています。瘀血とは、血液の滞りの結果起こる病態であるという認識が、何千年も前から存在しています。最近では、これらの病態を持つ女性は、将来心臓血管性疾患の発症が高くなるとの報告があります。
女性は、妊娠出産を終え、卵巣機能が衰え、更年期を迎える時、自分の健康のために何をするかにより、老年期の人生の質が大きく変わってくるのです。
この瘀血という視点で女性の疾患を見る時、血の巡り、つまり血管の循環の状態を評価しているわけですが、太い血管だけでなく、微小な血管の循環が問題です。最近は、血管内皮機能検査ができるようになり、血管年齢という言葉も普通に使われるようになりました。また、毛細血管レベルでの評価もできるようになり、「血管美人」という機械を使用すると毛細血管の血の巡りを判定することができます。正常血管では、毛細血管の走行が綺麗です。ガンの毛細血管は走行が乱れています。
最近の研究では、子宮内膜症で動脈硬化の進行過程で指標となる血管内皮機能が低下していることが報告されました。子宮内膜症が慢性炎症としての顔を持っているならば、心血管疾患のリスクになりうるのです。若い時の瘀血が、老年期の太い血管、心血管障害へと繋がることが想像されます。
瘀血を改善する駆瘀血薬として代表的な方剤は、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、五積散、女神散、柴胡桂枝乾姜湯、治打撲一方などがあります。これらには、桂枝、桂皮が含まれています。桂枝、桂皮は、血管を安定化させる作用があることがわかっています。
動脈効果と見た目は、関係があるでしょうか。広島大学の野間玄洋先生や、愛媛大学の伊賀瀬道也先生らは、見た目の老化と動脈効果に関係があると報告しています。耳たぶの縦シワは、皮膚の毛細血管が無機能血管になって、数自体も減少して形成されます。全身の動脈効果と関係しているのです。女性の見た目は血管年齢と関係があり、女性の容姿は、心身両面の健康を表すバロメーターでもあります。